先日、退職代行サービスを提供する企業が警視庁の家宅捜索を受け、弁護士法違反(非弁行為)の容疑がかけられたというニュースは、退職代行業界に大きな衝撃を与えました。
一般企業が運営する退職代行サービスは、法的な根拠を持たず、”使者”として依頼人の退職意思を会社に伝えることのみが許されている、というのが日本の法体系の原則です。
今回の事件は、この”使者”の解釈を広げすぎた結果、法曹界からストップがかかったものと見られています。
今後、退職代行サービスのルールが厳格化されることが予想されます。
そこで、今回は”依頼者目線”で、どのような状況でどのタイプの退職代行を選ぶべきか、その新しいルールを予測しながら徹底的に考えてみました。
あなたはどのタイプ?ケース別・最適な退職代行サービス
退職代行に依頼を検討する人が抱える主な状況やニーズは、以下の5つのケースに分類できます。
- 支払われるべき利益(未払い賃金・退職金など)がある
- 会社が超絶ブラックで、退職を申し出ると猛烈に追い込まれる可能性がある
- 自分で退職を言ったら引き留めに遭うことが確実、またはすでに引き留めに遭っている
- 自分から会社に退職を言い出す「勇気」がない
- 会社と交渉するのが「めんどくさい」、またはその時間が「もったいない」
これらのケースごとに、最適な退職代行を見ていきましょう。
ケース1:未払い賃金や退職金などが残っている場合
【最適な選択】弁護士が運営する退職代行
金銭的な請求(未払い賃金や退職金、残業代など)を伴う場合は、弁護士に依頼するのが最適です。
弁護士は法律の専門家として、会社との交渉や法的手続きを依頼者に代わってすべて行うことができます。
特に、弁護士には弁護士会を通じて会社に資料の提出を求める強力な権限(弁護士法第23条の2)があり、これによって未払い賃金を厳正な証拠に基づき確実に回収することが可能です。
未払い賃金は過去3年分さかのぼれるため、高額になることが多く、弁護士費用をその回収額でまかなえる可能性が高いため、最も適した代行手段となります。
ケース2:会社が超絶ブラックな場合
【最適な選択】労働組合 または 弁護士が運営する退職代行
〔未払い賃金などがある場合〕
弁護士一択です(ケース1と同じ)。金銭的なメリットに加え、事件性の高い事案にも対応できます。
〔未払い賃金などがない場合〕
労働組合が運営する退職代行が適切です。
超絶ブラック企業の場合、一般の退職代行(使者)が退職意思を伝えても、高確率で会社に認められず、交渉もできません。
労働組合は団体交渉権という強力な武器を持っているため、依頼者に代わって会社と交渉し、退職日や有給消化などの条件について話し合うことができます。
トラブルになりそうな場合は、交渉権を持つ労働組合に依頼することで、スムーズな退職を目指せます。
ケース3:すでに会社との間で「引き留め」の交渉が始まっている場合
【最適な選択】本人が「退職届」を内容証明郵便で送る
(プレッシャーをかけたいなら)行政書士に代書を依頼
すでに会社との間で交渉が始まっている状況では、一般企業による退職代行は非弁行為になる可能性が高く、介入が難しい状態です。
使者として退職意思を伝えても、電話を切られて終わりになる可能性が高いでしょう。
この場合は、ご自身で退職意思に迷いがないことを毅然と示すことが重要です。
最も効果的な方法は、退職届を内容証明郵便で会社に送付することです。
これにより、会社は退職を認めざるを得ない可能性が高くなります。
さらに、行政書士に依頼して退職届の代書をしてもらえば、書面に”行政書士が代書”した旨が記載されるため、会社に対して緩やかながらも無視できないプレッシャーを与えることができます(行政書士名の記載のある内容証明を無視したら、次の段階に進むことが予想されますから会社も引き留めをあきらめます)。
ケース4:自分から会社に言い出す「勇気」がない場合
【最適な選択】労働組合が運営する退職代行
一般企業の代行(使者)の場合、退職が成立した後も、有給休暇の請求、未払い賃金の請求、退職時必要書類の請求など、会社とのやり取りをすべて自分自身で行う必要が出てきます。
労働組合であれば、退職意思の伝達だけでなく、これらの付随する交渉や手続きまで丸投げで任せられるため、「会社と一切関わりたくない」という方には最適です。
ケース5:交渉するのが「めんどくさい」人や時間が「もったいない」人
【最適な選択】弁護士が運営する退職代行 または お好きな退職代行
”時間をお金で買う”タイプの方には、すべてを丸投げでき、最も強力な武器を持つ弁護士が最もスムーズです。
弁護士は会社との交渉はもちろん、その後の手続きや万が一のトラブル対応まで一手に引き受けます。
”めんどくさい”だけで、いざとなれば自分で何とか出来る人は、費用やサービス内容を比較して、ご自身の好きな退職代行を選べば良いでしょう。
雇用形態が”正社員以外”や”労働者以外”の場合
前記のケース分けは、すべて正社員の場合を想定しています。
正社員以外の雇用形態(契約社員、アルバイトなど)の場合:会社と交渉ができる弁護士または労働組合以外はリスクが高いです。
(交渉なしの退職は考えられないので、一般業者はありえません)
雇用以外の就業形態(請負、委任、公務員など)の場合: 労働組合は基本的に対応できないため、弁護士一択になります。
今回の家宅捜索事件を機に、退職代行サービスは”交渉できない使者”という本来の役割に立ち返ると予想されます。
ご自身の状況を正しく把握し、適切なサービスを選んで、後悔のないスムーズな退職を実現しましょう。
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