退職代行、その前にちょっと待って!「休職」という選択肢を考えてみませんか?
「退職代行」は社会に定着してきています。そして大手業者の中には、毎日100人近くの退職実績を公表しており、合わない会社から解放される人が増えていると歓迎すべきことにも思えます。
しかし、本当にそれだけで手放しに喜んで良いのでしょうか?
私たちは、労働法の観点からこの問題をもっと深く掘り下げてみる必要があると考えています。
■退職すると失われる「労働者」としての保護
労働基準法をはじめとする多くの労働法は、「労働者」を保護するためのものです。ここでいう労働者には、正社員だけでなく、パートやアルバイトといった非正規雇用の方も含まれます。一方で、宅配業者さんのような請負契約の自営業者の方は含まれません。
この「労働者」である期間は、私たちは労働基準監督署など、心強い行政の保護を受けることができます。何か問題があれば、労働基準監督署に申告することで、法律に基づいた対応を求めることができるのです。しかも、これは無料で利用できます。
しかし、一度退職し、雇用契約が終了してしまうと、私たちは「元労働者」となります。残念ながら、ほとんどの労働法の対象から外れてしまい、労働基準監督署の保護も受けられなくなってしまいます。例えば、退職後に「あのパワハラはひどかった」と思い出して申告しようとしても、受け付けてもらえないケースがほとんどです(労働基準法違反の可能性があれば告発することは可能ですが、個人的な問題解決は難しくなります)。
■パワハラなどの身体的な負担で限界なら、「休職」という選択肢を
もしあなたが、パワハラなどの被害に遭い、精神的に追い詰められて「もう会社とは一切関わりたくない」という一心で退職代行を考えているのなら、ぜひ「休職」という選択肢を検討してみてください(医者の診断書があれば大丈夫です)。
休職であれば、あなたは「労働者」の地位を保ったままです。
すべての労働法の保護を受け続けることができます。 労働基準監督署も引き続きあなたの味方です。
健康保険にも継続して加入できます。 傷病手当金を受け取ることができ、給料の代わりとして経済的な支えになります。
そして何より、作業環境から完全に切り離されて療養に専念できます。 もし上司などから不当な接触があった場合でも、会社の人事部門に苦情を申し立てれば、あなたは労働者として保護される権利を持っているため、会社は慌てて上司を制止するはずです。
休職は、心身を休めながら、冷静に今後のことを考える時間を与えてくれます。
■退職は、自分の意思で未来を切り開くためのもの
退職代行は、弁護士でさえ本人の代理行為しかできません。退職後の人生は、あなた自身で切り開いていくしかありません。
だからこそ、退職を選ぶのは、今後のことをしっかりと考え、自分で前に進んでいける準備ができた人だけであるべきだと私たちは考えます。
もし今、あなたが苦しい状況にあるのなら、まずは「休職」という選択肢をじっくり考えてみてください。それは、あなたの未来を守るための大切な一歩になるかもしれません。